2000年4月16日
ぼくの部屋
こんちは、コジマケンです。ごぶさたしちゃってます。
ここのところぼくは毎日じぶんの部屋のなかでほとんどの時間をすごしているような生活をしておりましてね、煙草とピーナッツチョコとプリングルスのポテトチップを買いにコンビニに行くとか、あるいは仕事の打ち合わせで外に出るとかのほかはだいたい自宅のこの部屋の中におりました。いわゆる部屋ごもり。
なんかさ、子供のころにひとり乗りのちっちゃい宇宙船とか潜水艦とか、そういうものにすっごく憧れていたんです。落書き帳やいらない紙にそういう乗り物の設計図の真似事みたいのを書いてみたりしてさ、それに乗ってひとりで生活しながらいろんなところを探検してみたいなーとか、現実には旅行が大嫌いな子供だったんだけど、そんなふうなこと夢想しているのは大好きな子供だったんです。
なあんてこと考えるようになったのは、いままでぼくの部屋の天井で輝いていた白色の蛍光灯を当分のあいだできるだけ消しておくようにしようと決めたからかな。
15年くらいまえのことだけど、友達のあいだで煙草にいろんなものを詰めて吸ってみるっていうのが流行ったことがあります。紅茶の葉っぱとか唐辛子とかいろいろな香辛料とか。なにかで偶然トリップしちゃったりしたら面白いよなーとかみんなで夢みながら。当時は合法ドラッグとかそういうようなものは全然なかった時代で、恐ろしい違法行為をする勇気はないけれどもサイケデリックに興味があるんだなーなんて若者たちは、みんなそんなみみっちい努力をしたものです。ま、結局どれもこれもただもくもくするだけの煙りでしかなくてトリップというには程遠く、普通の煙草を吸ってるほうがよっぽどいいやって感じだったんですけれど。それでもなにやら怪しげなアヘン窟のようなムードを演出したくって、ぼくたちアジア系の物産店で買ってきたお香を焚いて、シナモン入りのマサラティー飲んで、部屋を薄暗くして、みんなで香辛料持ちよってニタニタしながら夜更かししてたんです。
そんなかんじに明るすぎないこの部屋で、夜中にひとりゆらゆらと考えごとをめぐらしていたら、あるときふっと夜の大海原、波にゆられてキラキラ光る星を数えているような気がしたものです。もしかしたらそれは大イカの光る目玉だったかもしれませんが。
2000年4月21日
ま、そんなわけでさ。
こんにちは、コジマケンです。
まあそれはそれとして。
去年のいまごろだったかな、書き下ろしのまんがの本を作るぞーってなこといって一生懸命まんがをかいてたりしました。たしかだらだら書きのこのコーナーにもそんなこと自慢気に書いていたような記憶がある。あれはいったいどうなったんだい?
で、それはそれとして。
このホームページに遊びにきてくださるかたがたのほとんどは、コジマのまんがは読んだことないよってかただろうなって思います。コジマの仕事は基本的にはイラストレーターでありまして、まんがの仕事はほんとにほんとにちょこっとだけ。まんが家としてデビューしたときとときを同じくしてイラストレーターとしてのお仕事も舞い込んできましてね、一枚絵の仕事ニもとても興味あるのでそのときからイラストレーターとしての仕事を中心に働いているわけなんです。ぼくの場合、仕事でまんがはなかなか難しい。
ま、そんなわけで最近のコジマはまたあいかわらずの部屋ごもりの日々。夜はほとんどゼットライトだけで、滅多に蛍光灯つけない暮らしに慣れてきちゃいました。蛍光灯消しはいつまで続くかはわからないけど、いまはこれがとっても楽しい。
そういえば、こないだイラストレーターの市川こずえさんの手作り雑貨の店「プカプカ堂」がオープンしたのでちょっとだけのぞきにいってきました。あんまり時間がなかったので、ぼくは挨拶だけしてすぐ帰ってきちゃったんだけど、なんかとってもいい店ができたみたい。これから楽しく発展していきそうな予感たっぷりなので江古田近辺の面白いもの好きのひとはぜひぜひ行ってみよう!!
ではまた。
あ、そうそう、「こじが」問題なんですけどね、ほかにも友だち何人かにきいてみたところ、まんが家の本山理咲さんひとりをのぞいて全員反対っぽかった、ああ‥‥(笑)。はたして「こじが」に未来はあるのだろうか!?
最近あんまりだらだらした生活していない感じなので、そろそろ「今週のだらだら書き」っていうタイトルをやめたいなーとかこないだも書いたんですが、なんだかまだだらだら書きのまんまです。おまけに全然ホームページに手を入れることもしてなかったので、もはや「今週のだらだら書き」ならぬ「今月のだらだら書き」なのではなかろうかなんてちょっと思ってみたりもしつつ‥。
まそんなかんじの日々だったのでね、この仕事続けていくっていうことはもしかしてコジマの未来はずっとそういう生活なのかしらんなんて思ったらさ、こりゃ人生ほとんどの時間をこの六畳と四畳半のふたつの部屋ですごすってことになってしまう。うわー、ぼくの世界はこのふた部屋だけー? うはははーっこりゃ面白いってちょっとヤケクソ入り。
なかでもいちばん夢中になったのは、たしか潜水艦だったかな。毎日まいにち設計図に手直しを入れたりして、とっても気に入った乗り物だった。それはひとり乗りの潜水艦で、立ち上がるとハッチから頭が出ちゃうくらいに小さいの。だから操縦席に座ったままで食事もできるようになってるし、スイッチ押せばジュースが出てきたり、座席を倒せばベッドにもなるのね。無線であちこちと交信することもできるし、水中深く潜って光る目玉の大イカと戦うこともできる。まさに無敵の超小型潜水艦だったな、それをぼくがひとりで操縦していた。まさに子供のネモ船長。
最近のぼくの生活も、子供のころの勇敢さには欠けるかもしれないけれど、なんだかそんな感じもちょっとしたりして。ちいさなふたつの部屋をひとりで入ったり来たり。コーヒー飲んだりチョコ食べたり。あたまのなかは相変わらずの怪しい多次元宇宙の探索、そしていまのところまだ発表の予定のたたない報告書づくり。世の中と接点少ない暮らしなので、時折パソコンのモニタを潜望鏡がわりにおもてを覗いてみたりなんかして。
はっと気がついたら、この部屋がぼくのちいさな潜水艦になってたみたいな気がしました。
じぶんが生活している時間のほとんどを自宅の部屋ですごすってことは実際やってみるととっても退屈なことでもありまして、しかもほとんどひとりっきりだしテレビもそんなに観るわけでもなし、テレビゲームも最近やる気ないし、退屈しのぎに誰かに電話して長話しするなんてこともあんまりしなくなったし。そんなかんじだからなにかしら生活に変化をつけたい。そこで思いついたのが蛍光灯の電気は消すっていうこと。仕事中には蛍光灯のあかりがなくては正確な色がわからなかったりするからつけておくわけだけど、そのほかの休憩時間はスイッチ切って暗くしておけばひとつの部屋でも二倍楽しめるってことになる。これがいまはとってもカイカン、すごく居心地のいい部屋になりました。
こないだからのぼくの部屋の蛍光灯消しは、そのときのぼくたちの偽アヘン窟演出方法をそのまま応用しています。べつに難しいことはなにもないのですが、とにかくゼットライトは、できるだけ上に高く延ばして傘を逆さにして天井を照らす。電球が直接視界に入らないようにすることがポイント。そして蛍光灯は消しておく。この蛍光灯のひもってのも部屋のまんなかでぶらぶらとうっとうしいかんじするから、くるくるっと丸めて洗濯ばさみで止めちゃうんです。これでカンペキ。
こうして逆さゼットライトの灯りになじんでくると、なんだかじぶんの生活がとってもいいかんじになってきます。なんでも明るく照らしてしまう蛍光灯の光りは、仕事中や部屋のすみっこに転がっていってしまった消しゴムなどを探すときにはとても便利でいいんだけど、ゆったりと考えごとするにはちょっとうるさいなあって思うときがある。逆さゼットライトの灯りはやわらかくぼんやりと部屋を照らすので、リラックスしてものを考えるには調度いい。明るすぎないからだと思うんだけど、聴覚と想像力が活発になるのかステレオで聴く音楽がやたらといい音に感じられたりもする。その他効能いろいろ、いまのぼくはこういう部屋の灯りがとっても気に入ってるところであります。
さて、ぼくのこの小さなひとり乗り潜水艦、いまもゆらゆら2匹のクジラといっしょに深い海の中を漂っております。どこかに海賊の財宝でも眠っていないかしらん。みつけたときにはまたこのホームページでご報告したいと思っております。わけまえは期待しないで下さいね。
ではまた。
なんか前回のだらだら書きは、なんだかあんまり意味がわかんなかったですね。文章ってむずかしいなー。
コジマはよく落書きノートにあれこれ気の向くままに文章つづって遊んでたりします。これは昔からよくやってました。考えがまとまんなくなると、とりあえず考えてることを文章にする。それでまとまるときもあるし、まとまんないときもあるんだけど、なんだか書いたことでその場はちょっと落ち着くんです。
とまあコジマにはそういうノートがあるのですが、最近そのノートによいことだけを書いてみようっていう実験をしているところ。つまりじぶんの考えることのなかにはポジティブな面とネガティブな面とあると思うのだけど、ネガティブな面はできるだけ無視して、ポジティブな面にだけちからを加えるように文章を書き続けたらいったいどうなるかなって思ってね、試しにやってみているんです。
そしたらこれ、ものごとをなにかとよい方向に考えるにはとってもよい訓練になるみたい。じぶんの思考回路をポジティブな思考回路に組み換えるかなり効果的な方法だと思いました。この実験をこのまま続けていくとなると、おそらくぼくはとっても人間的に明るいいいひとになってしまって、もしかしたらものすごく出世して偉くなってしまうかもしれません。人生の成功者にだっていますぐなれそう。おいおい困ったなー、べつにそんな大それたことするつもりもないので、いつ実験中止にするかじつはいまちょっとタイミングを計っているところなんですよー。
でもね、この実験には副作用があるってことがわかった。
文章が下手になる。
ま、文体はひとそれぞれだから、ひとによっては大丈夫なんだろうけど、ぼくの場合、いまちょっとこの副作用にやられてるかもわからない。実際のハナシ、ネガティブがあるからこそポジティブが輝いてみえるのだし、悪が滅びたら正義の味方は職を失ってしまうだろうし。文章ってのもどっちか片方だけで成立させるのはむずかしいもんだなーなんて思った。
すんません。まだできてません。
一応去年ずっとごちゃごちゃと時間の許すかぎりかいてたはいたのですがね、かけどもかけども迷宮入り。一冊まるごと書き下ろすってのはちょっとじぶんにはキツイことだったかな、こんなやりかたしてる限りは、永遠にでき上がらないかもしんないぞーってようやくわかったのが去年の暮れのことでありました。
ほかのまんが家さんたちはどうやってるのかな、コジマの場合、ずっとかいてるとこれが面白いのか面白くないのかとか、それ以前にこれがストーリーを追って読めるものなのか読めないものなのか、そういうことがだんだんわかんなくなってくる。だからときどき遊びにきた友だちに、途中まででも読んでもらったりすることが多かったんだけど、学生のころとかに比べると、うちに遊びにくる友だちもめっきり少なくなってしまってね、なんかホントにひとりっきりでなんの手がかりもなく仕事の合間をぬって一冊書き下ろしってのはあまりにぼくが切なくて可愛そうでしょ、だからちょっとやりかたを変えることにしたんです。ひとりっきりで悩むのはもうくたびれました。
と、そんなわけでいまは某社でコジマがお世話になっている編集者のWさんが、わりと近辺にお住まいということなので、月にいっかい仕事を離れて個人的にネームチェックお願いしております。これでとうとうプロフェッショナルの編集さんまでコジマのワガママに巻き込んでしまったというわけなのだ。これでできなかったらもうたいへん。
いやはや、快く引き受けてくださったWさんにはホント、感謝しております。
でもまだかいてるとこですからできてませんけどね。
それでここからはちょっと偉そうなこと書くかもわかりませんので鼻をつまんで読んでくださいね。
ずっとまえからぼくはときどきいわれるんです。誰かにじぶんのまんがを読んでもらったときなんかに、「これはまんがではない」って。これ、いい意味でいわれることもあるし、悪い意味でいわれることもある。ま、ほとんどが悪い意味でいわれるわけで、絵本とかにいったほうがいいんでないのー? とか、なんかあんた勘違いしてんでないのーみたいな‥‥(笑)。ぼくはじぶんでは、いかにもマンガチックでまんがらしいまんがをかいているつもりだったのだけどな、どっかずれてるのかもしれない。
でも、なかには稀にいい意味でいってくれるとっても思い入れてくださった親切なひともいてね、これはずっとずっとまえのことなんだけど、「きみのまんがはまんがではなく、なにかまったくべつの新しいジャンルのものなのではないかー!?」って。えーっ!? 続けて「昔、まんがからもっとリアルな表現に向かったひとたちが、じぶんたちのかくものを劇画と名付けたみたいに、きみのまんがもなにか新しい名前が必要なんじゃないのか。それがないと読者には理解できないかも知れないぞー!!」って。えーっ!?
とまあこれはほんとにずっとずっとまえにいわれたことなんだけど、ときどき思い出すんです(こういうことじぶんが書くのは偉そうで笑っちゃいますね‥)。でもまあぼく自身はほんとにこれはまんがらしいまんがのつもりでかいてるのでね、コジマのまんがになにかまったく新しいジャンルの新しい表現を期待されちゃってもそういうものは全然ないですからね、あしからず(いまかいてるのもべつにごくフツーのまんがのつもりでかいてます)。
でもなんか、コジマの思うまんがらしさっていうのと、ほかのひとたちの思うまんがらしさっていうのが会話のうえですれ違ってしまうことが多いのは確か。そのことで、もしかしたら読者(何人いらっしゃるかはべつとして)以上にぼく自身が混乱しているのかもしれないなって思うこともあることはある。もしかしたらぼくのまんがが遅々として進まなくなってしまうことが多いのも、じぶんがかく「まんが」を「まんが」だと思っていることに原因があるってこともあるかも。やっぱりほんとにぼくの「まんが」に新しい名前を考えようかなーなんて思ったりもして‥‥。新しいジャンルの表現をするって意味でなく、読者のためってわけでもなく、ただじぶん自身の表現を明確にするというためにこそ‥‥。
「まんが」、そして「劇画」、んー‥‥‥、そんじゃなんて名前にしようかなー‥‥。
やっぱりコジマのまんがだから、「こじが」?
って、こないだ思いついてね、さっそく打ち合わせで会った編集のWさんにいってみた。
ぼく「まあそんなわけで、ぼくのまんがに新しい名前をつけたのですが‥‥」
Wさん「はい‥‥?」
ぼく「あの‥‥、こじがって‥‥」
Wさん「えっ!? プッ‥‥」
ぼく「こじが‥‥」
Wさん「はははははーっ」
ぼく「えーっ!?」
案の定笑われておしまいになりましたけどね。
コジマのポストカードも印刷したら置いてもらおうと現在計画中なのだ。